最近ふとスマホやパソコン、テレビに目を向ければ必ずと言っていいほど目にする【イスラエル・パレスチナ問題】だが、この記事の読者もふわっとした知識こそあれど、深くまで知っている人は少ないであろう、もしくは遠く異国の地での長年の紛争であり理解しようとすることを諦めている方も多いのでは無いだろうか?
また、宗教に対して無頓着な我々日本人は、ユダヤ教VSイスラム教の構図のような宗教紛争の一部だと勘違いをしている方も多いはずである。
しかしながら、今回の【イスラエル・パレスチナ問題】においては、宗教的な側面は少ないだろう。
近年ではイスラム教の解釈レベルのいざこざ程度は少なからずあるものの、そもそも20世紀以降において宗教的な目的達成のために国家間レベルの大規模な戦いが起こったことは筆者が知る限り皆無である。
少し海外のニュースに詳しい方は、イスラム教徒のムジャヒディン(イスラム聖戦士)が自爆テロを起こしたり、「アッラーアクバル!」(神は偉大なり)と叫びながらロシア製T-72戦車にRPG-7(対戦車ロケット弾)をぶっ放す動画を見た事があるかも知れないが、これらにおいても、神の為に戦うというよりは、神が自分達に与えてくれたものを守るという意味合いが大きく、また、自爆テロなどはそもそも本来のイスラム教の教えにすら背く行為だとの見解も多い。
そこで改めて今回の紛争を考えてみると、やはり宗教や民族間の紛争というよりは、土地を巡る紛争であると理解できる。
パレスチナ地域の歴史は古く、紀元前にはペリシテ人という民族が暮らしていたが、神に導かれたユダヤ人が神に約束されたカナンの土地としてこの地域に移り住み、また、各方面からの攻撃によって彼らが散り散りになり、それから紆余曲折あり最終的に現在のトルコの前身であるオスマン帝国がこの地域を治めていたというのが、簡単なパレスチナの歴史である。
ではなぜ散り散りになっていたユダヤ人がこの地域に再度集結したのかと言えば、ユダヤ人の多くは散り散りになったとはいえ、ヨーロッパ中の各地域で、さまざまな分野において経済的な発展を遂げており、ユダヤ人=お金持ちの構図ができていたため、第一次世界大戦時にオスマン帝国との戦争資金に困ったイギリスが、ユダヤ人に対し「資金援助をしてくれたらパレスチナにユダヤ人国家の建設を認めるよ!」と資金援助の条件として、彼らに土地を譲るという約束をしていたのである。しかし、ここはイギリス。一筋縄ではいかず、なんとオスマン帝国内のアラブ人にも、「オスマン帝国の中で内乱を起こしてくれればパレスチナ地域にアラブ人国家の建設を約束するよ!」と同じ約束を取り付けていたのである。また、その他にも世界大戦において共闘していたフランスやロシアにも戦争に勝ったらパレスチナは自分達だけで分割して統治しよう!と三方面に全く異なった提案をしていたのである。これはイギリスの三枚舌外交と言われ今でもイギリスの当時のいい加減な外交を指す言葉として残っている。
その後、当初の約束通り1948年に独立宣言を行ったイスラエルだったが、もちろん約束通りパレスチナに住んでいたアラブ人もその土地を離れるつもりも無く、今日まで続く紛争へと発展していったのである。
その後数十年間、欧米がイスラエル、エジプト,サウジアラビアなどのアラブ諸国がパレスチナ自治政府を支援し対立するという構図が出来上がっていたのだが、今回パレスチナ側の大きな支援国家であるサウジアラビアがイスラエルとの関係正常化に舵を切り、大きな『後ろ盾』を失う事を恐れたパレスチナ側が追い込まれた形になり、特に過激な地域である『ガザ地区』を実質統治している「イスラム原理主義組織ハマス」が大規模なテロ行為に踏み切ったというのが大方の見方である。
今回このハマスが行った、音楽フェスを武装強襲し、手当たり次第に一般市民を大量殺戮し、さらに連日無差別にイスラエル国内にロケット弾を撃ち込み続けるというのは近年まれにみる最悪な悲劇であるが、その報復としてイスラエルも、警告しているとは言え学校や病院などの施設に向けてミサイル攻撃を繰り返しているのも同様に最悪の事態である。もちろん「ハマス」があえてそういった施設の地下などに【戦術指揮所】を作っているのは問題だが、それでも現代の国際世論は一般市民を巻き込む攻撃には厳しい。
また電気,ガス,水道,インターネットやモバイル通信などのインフラ機能はイスラエルを通してガザ地区に供給される為、軍事的に使われたくないという言い分は理解できるが、それらを完全に止めてしまうのも非武装の市民をも標的とした攻撃と判断されても致し方ないと思う。
ここまでは現在の【イスラエル・パレスチナ問題】の現状なのだが、ここから先の内容が最も救いようが無く、悲しいことなのである。
それは、この【イスラエル・パレスチナ問題】はもう一つ世界で話題になっている【ウクライナ・ロシア問題】と比べて、世界中の多くの人にとって『あんまり関係無い』事である。
上述の【ウクライナ・ロシア問題】においては、石油やガスなどのエネルギー供給の問題が世界中に拡散し、世界中のあらゆる物価に影響が出ている、また、小麦に関してもロシアが世界1位のシェアを持ち、ウクライナが世界5位である、この2カ国だけで世界の小麦の30%近くを賄っているのである。
これには明日の生活が懸かっている世界中の人々が関心をよせるが、【イスラエル・パレスチナ問題】について同じ視点で見てみるとどうだろう?
ご存じの通り、ほとんどの人類の生活には「特に関係無い」のである。だからこそ大きな力がはたらき、制止されることも無く淡々と争いが激化していっているように感じる。
このような現状を踏まえて私たちは、より人道的な配慮をした冷静な行動を両者に強く訴えかけることが重要だと思う。
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